構造美にシビれます・・・
「くじら橋」~南多摩尾根幹線道路・稲城中央公園~

シビルマテックスです。

今回の記事は初分類となる「街で見たシビれる仕事」です。
しかしその先の分類ができません。
公園でもない街路でもない・・・。橋梁のお話しです。

シビルマテックスの多摩センターオフィスは、多摩ニュータウンのど真ん中にあります。
小田急線、京王線、多摩都市モノレール。公共交通機関を使うと、どこへ行くのもアクセス良好です。
クルマ移動の場合も・・・。まあ、悪くはありません。
しかし、初めて来た方や馴れない方は、どこを見ても同じ風景に見えるらしく、23区内から来たタクシーの運転手さんも迷子になるようです。
さてこの多摩ニュータウン、歩車分離の導線を基本スタンスとして街づくりが行われているので、とにかく橋による立体交差が多いのです。多摩丘陵の複雑な起伏を活かした結果なのでしょうか、歩行者専用の橋が特に多いように感じます。
普段、クルマでの移動が多くこれらの橋を渡ることは殆ど無く、どちらかというと下から眺めることが多い私は、過去に橋の高欄、親柱、歩道など、いわゆる橋面デザインやその計画や施工にも関わっていたこともあるせいか橋面がどうなっているのかが気になるところではあります。

そして、多摩ニュータウンの大動脈と言えば多摩ニュータウン通り。この多摩ニュータウン通りとほぼ平行に、稲城市の府中街道「矢野口」から町田市の町田街道「小山」を結ぶ道路が南多摩尾根幹線、通称「尾根幹」(オネカン)です。稲城市、多摩市、八王子市、町田市を結ぶ5路線の都道から成るこの「尾根幹」は決してメジャーな大動脈とは言えませんが、沿道には大規模なショッピングモール「ぐりーんうぉーく多摩」、とても華やか「大妻女子大学」、迫力の「国士舘大学体育学部」、えっ?こんなところに?「小田急線唐木田駅&車両基地」、通年営業が魅力「アクアブルー多摩(多摩市営の温水プール)」、江夏豊氏が引退試合を行った「多摩一本杉球場」など・・・様々な公園や施設が点在しており近年は交通量も増加の一途です。

さて、本題・・・
この「尾根幹」には、道路を跨ぐ多くの橋が架かっています。もちろん、クルマ移動の私は下から眺めている訳ですが、それぞれに特徴があって隅田川に架かる橋を屋形船から見上げているような感覚になります。

これら多くの橋の中で圧倒的な存在感を示すのが「尾根幹」を跨ぎ「稲城中央公園」に架かる「くじら橋」です。107mのコンクリート橋ですが、プレストレストコンクリートならではの洗練された3次元曲線が魅力的です。コンクリート=重厚という特有の素材概念を思わず忘れてしまうくらいの美しさです。

今から8年前の2000年、都市景観に関わるスペシャリストの方々とご一緒にヨーロッパに視察に出向く機会がありました。
そのとき、パリのシャルルドゴール空港や開港直前のスペインのビルバオ新空港、ビルバオ市内の地下鉄等を視察したときに日本では見かけることが殆どないような薄くて曲線の綺麗なコンクリート構造物やコンクリート二次製品部材を目の当たりにして感動したことを思い出させるような共通点と言いましょうか・・・いわゆる構造美というそれがこの「くじら橋」にはあるのです。

土木構造物や建築物は当然のことながら雨ざらしになります。そして、雨の多い日本では、「水垢」が美観阻害の大敵となります。
建物の外壁や門周りや塀などに黒い筋が・・・・皆さんこういう経験があるかと思いますが、「くじら橋」はそんな水垢が付き難く美しく汚れない工夫もされています。
一見分からないこういう配慮にシビれます。

実はこの水垢対策は、ちょっとした気遣いがあればあらゆる面で応用できます。
ちなみにシビルマテックスが施工する外構・エクステリア工事では、門塀や擁壁などに水みちを見極めた水垢による汚損対策を人知れず当たり前に行っております。

橋面は至ってシンプル。
袂から中央に向かってのシェイプが素晴らしいです。
普通に歩いていると、ちょっと勾配が気になるくらいで高欄と一体になった植栽帯の効果もあり橋上であることに気がつかないくらいです。

夜景も綺麗です。
夜景の総合ナビゲーションサイト「夜景NAVI」さんにも「くじら橋」が掲載されていますが、こちらで見られるのは「くじら橋」の橋上から街並みを望む夜景なので、「くじら橋」が主役の夜景を撮影してまいりました。
ライトアップされた「くじら橋」は、三次元曲線がより強調されて非常に美しいです。

クルマで通過するときは脇見運転に注意・・・ですね。